/AJACSi1

2019年応用動物昆虫学会大会連動企画・データ解析講習会

2019年応用動物昆虫学会大会連動企画・データ解析講習会

応用動物昆虫学会の告知ページ

開催概要

近年の次世代シーケンサー(NGS)の低価格化等の理由により、データ解析はデータの生産者が行う時代になっております。 昆虫学においてもNGSを利用した研究が増えてきており、その有用性は言うまでもありません。 しかしNGSを利用する際に必要な膨大なデータを解析するスキルが学会内でもまだ十分に普及していないのが現状です。 そこで2019年本学会大会に合わせて、ハンズオンのデータ解析講習会を企画しました。

講習会の日時

2019年3月24日 (日曜日)(2019年の応用動物昆虫学会大会の初日の前日) 13:00-16:00

場所

情報・システム研究機構 ライフサイエンス統合データベースセンター 柏ラボ 住所: 〒277-0871 千葉県柏市若柴178-4-4 東京大学 柏の葉キャンパス駅前 サテライト 6階(つくばエクスプレス 柏の葉キャンパス駅降りてすぐ)

内容

公共データベース内にある昆虫のNGSデータを用いたトランスクリプトーム解析 (講師:坊農 秀雅、TA:仲里 猛留・横井 翔)

  • 公共データベース内のデータ検索、ダウンロード
  • contig へのmappingによる発現解析
  • 発現変動遺伝子の抽出
  • 発現変動遺伝子の機能推定

受講者レベル

  • 次世代シーケンサーDRY解析教本Level1-2にあるUNIX操作を一通りマスターした人
  • Mac所有者(Linuxでも可だが、講習はMacで行います)。コンピュータは自分で持ち込むこと
  • ハードディスク(USB接続の外付けハードディスクでも可)に十分な空き容量(約10Gbyte)があること

最大受講人数

20名(応募者多数の場合は主催者側で選定します。各研究グループから1人のみの参加とします。応募が非常に多数の場合は各大学もしくは研究機関から1名なる場合があります。)

注意事項

開催日は日曜日で会場は休館日のため、途中入場は原則できません。午後1時に会場前に集合してまとまって入場します。

(以下、講習内容)

1. 公共データベースを利用しよう

1.1 Sequence Read Archive (SRA)

いわゆる「次世代」シークエンサーから出てきた配列データの一次アーカイブ。 DDBJ/EBI/NCBIの3つによって運営されている国際塩基配列データベース共同研究International Nucleotide Sequence Database Collaboration (INSDC)によるデータベースの一つ。

日本からだとDDBJのそれが最寄り。

【課題1】DDBJ Searchを使って、SRAから興味深いデータを検索

  1. 気になるFASTQデータをテキスト検索、SRA(DDBJ)からダウンロードします(例: SRR8189328,SRR8189329)
  2. 出て来たRUNの所のsraのリンクを「リンクのアドレスをコピー」して、例えばcurlコマンドで取得します

例:curl -O ftp://ftp.ddbj.nig.ac.jp/ddbj_database/dra/sra/ByExp/sra/DRX/DRX111/DRX111587/DRR118520/DRR118520.sra

複数人で同時にやるとダウンロードが遅くなります。そこで、講習会では今後の講習に必要なデータが入ったハードディスクをお貸ししますので、この操作はやらないでください。

  1. ダウンロードしてきたファイルサイズがオリジナルのそれと同じならOK(より一般的にはmd5値を確認)。そうでない場合は再取得。

公共遺伝子発現データベースに登録された遺伝子発現データについて、各種統計情報から検索・閲覧・比較することができる目次サイト。

【統合TV】AOEを使って遺伝子発現データベースの統計を見ながら検索する 2018

1.2 Transcriptome Shotgun Assembly (TSA)

TSAは、INSDCによって維持されている、アッセンブルされたcDNA配列のデータベース。 TSAに関してもSRA同様、DDBJ/EBI/NCBIで同じデータが維持されている。

【課題2】NCBIのTSA Browserを使って、TSAから興味深いデータを検索

  • 気になるTSAデータをNCBIで検索
    • 左の'Taxonomic Groups’からや、'Term'から直接
  • アッセンブルされた配列データ(FASTA形式)をダウンロード
    • 'Download'タブから
    • Sequence Read ArchiveのどのRUN ID(SRR,ERR, DRRのいずれかから始まる)からアッセンブルされたものか、に注意

2. SRAとTSAを組み合わせた発現定量解析

  • すでにアッセンブルされた配列セットは手元にある
  • それを使ってそれの元となった(実は元でなくてもいい)FASTQファイル(複数可)を使って発現定量する
  • Trinity付属プログラムのalign_and_estimate_abundance.pl を使うと、転写量を見積もって定量できる

【課題3】アッセンブル済みのcDNA配列セットを利用して発現定量

ツールの準備

まずAnaconda(miniconda)とBiocondaのインストール 【参考ブログ】

% conda config --add channels defaults
% conda config --add channels conda-forge
% conda config --add channels bioconda
  • fasterq-dumpするのに必要なsra-toolsをインストール % conda install sra-tools
  • 発現定量に必要なツールのインストール
    • samtools % conda install samtools
    • kallisto % conda install kallisto
    • align_and_estimate_abundance.plは、Trinityパッケージに含まれているので、TrinityをGitHubから取ってくる。その際、以下の例ではホームディレクトリ以下のDownloads以下に取ってくるようにしてある。
% cd 
% cd Downloads 
% git clone https://github.com/trinityrnaseq/trinityrnaseq

データの準備

FASTQ形式のファイルを準備

  • SRA形式ファイルがある場合
    • fasterq-dumpの実行例
# Midgut
% fasterq-dump SRR8189329.sra
# Head
% fasterq-dump SRR8189328.sra
  • SRA形式ファイルが手元にない場合
    • fasterq-dumpの実行例
# Midgut
% fasterq-dump SRR8189329
# Head
% fasterq-dump SRR8189328

発現定量スクリプトの実行

以下のスクリプトをalign_and_estimate_abundance.shとして保存 【参考ブログ】

#!/bin/sh
thre=4
transcript=IACV01.1.fsa_nt.gz
left=$1
right=$2
# parameters to run above
time perl ~/Downloads/trinityrnaseq/util/align_and_estimate_abundance.pl \
--thread_count $thre \
--transcripts $transcript \
--seqType fq \
--left  $left \
--right $right \
--est_method kallisto \
--kallisto_add_opts "-t $thre" \
--prep_reference --output_dir kallisto_out

以下のコマンドでスクリプトを実行

% sh align_and_estimate_abundance.sh SRR8189329_1.fastq.gz SRR8189329_2.fastq.gz

発現定量結果の閲覧

% less kallisto_out/abundance.tsv

DEG解析

別のサンプルで実行。 その二つの差分をとる。

【発展1】アッセンブル済みのcDNA配列セットのさらなる再利用

Transdecoderでタンパク質コード配列を予測する

% conda install transdecoder
% TransDecoder.LongOrfs -t IACV01.1.fsa_nt.gz
% TransDecoder.Predict -t IACV01.1.fsa_nt.gz

IACV01.1.fsa_nt.transdecoder.pep というファイル名で予測されたタンパク質配列が得られる。

予測タンパク質配列をDBにしてlocalBLAST

3. de novo transcriptome assembly

ここはハンズオンでなく、説明のみの予定。

Homebrew のインストール

Homebrewが入っていなければ、以下の手順でインストール。

$ /usr/bin/ruby -e "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/master/install)"

Trinityのインストールに必要なgccとcmakeを先にインストール。

$ brew install -v gcc@8
$ brew install -v cmake

Trinity のインストール

Trinityは転写配列のアッセンブルに使われるソフトウェアである。 以下のコマンドを実行してTrinityをインストールする。

$ brew tap brewsci/bio
$ brew tap brewsci/science
$ brew install -v trinity 

Javaが必要になるので、インストールされていない場合は、以下のコマンドを実行してJavaをインストールする。

$ brew cask install Java

インストールに際して、スーパーユーザー権限が必要となることに注意(マシンの管理者権限が必要)。

Trinity実行

以下のコマンドでTrinity実行。

# ペアエンドの場合
$ Trinity --seqType fq --left read_1.fq.gz --right read_2.fq.gz --max_memory 64G --CPU 4
# シングルエンドの場合
$ Trinity --seqType fq --single read.fq.gz --max_memory 64G --CPU 4

変換したFASTQファイルをペアエンドの場合--left--rightオプションで(シングルエンドの場合は、--single)、使用可能な最大メモリを--max_memoryで、使用可能な最大CPU数を--CPUで指定する。 Trinityの実行は非常に長い時間がかかる。 途中でエラー停止することなく、trinity_out_dirディレクトリ中にTrinity.fastaができていれば実行成功である。